真夜中のラヂオ

年上のひと



 信号待ちしているとき、耳に入ってきた会話がきっかけだった。
「やっぱり先輩ってかっこいいよね〜」
「うんうん、うちのクラスの男子ったらみんな子どもだもん」
「そうそう、掃除はサボるし、すぐケンカするし。だいいち女の子の気持ちなんて全然わかってないしさあ」
「彼氏は年上がいいよ、ほんと」
 意味ありげにため息をつきながら最後にそう言った子もオレと同じくらいの歳だ。貴重な意見を忘れないうちにメモしている途中ふと疑問がわいてきた。ねえちゃんも年上がいいって思ってるのだろうか。それでねえちゃんも同級生を子供だと思ってたらどれくらいオレは子供なんだろう?
 家に帰るとねえちゃんがリビングで再放送のドラマを見ていた。のん気というか、ねえちゃんらしいというか。お帰り、なんていいながら、けっこう真剣にテレビにクギ付けになってる。
「なあ、ねえちゃん」
「なに?」
「年上と年下の男、どっちがタイプなんだ?」
「急にそんなこと言われても……」
「いいから! どっちか選んでよ」
「…………うーん。なんとなく年上、かな」
 ショックだった。聞かなきゃよかったと後悔したけどもう遅い。
「でも、どうしてそんなこと聞くの?」
「えっ、いや。……将来兄になるヤツがどんなのかと思ってさ」
「もう、わたしまだ高校生だよ。そんなこと考えるヒマがあったら宿題でもしなさい」
「別にいいだろ、弟としてけっこう重要なことだぞ」
 オレとしても重要なことだ。ねえちゃんをかっさらっていくような男はちゃんとチェックしてやらなきゃ。もしねえちゃんを幸せに出来ないようなヤツだったらオレが門前払いにしてやる。

 ホントはねえちゃんをずっと側で守ってやりたい。でも、そんなこと無理だってわかってる。ねえちゃんは今みたいにオレのことは完璧に弟としてしか見てくれないし、オレはまだ小学生だ。もしも弟でも子供でもなかったら何も問題なんてないけど、どうやったってこの現実は変えようがない。
 前にオレかねえちゃんのどっちかが養子で血がつながっていなかったら、なんてドラマみたいなことを考えてみたことがある。
 でも昔から似た姉弟だと言われてるし、うちにそんな深刻な話題が出たことだってない。リビングでテレビを見ていて養子とか、義理の兄弟なんて話題が出てきてもお父さんもお母さんも平然としていたから隠し事なんてないらしい。この通り、わが家はいたって平和な家庭だった。疑問の余地も何もなかった。

 だから、オレが将来イイ男になってねえちゃんをたくさん悔しがらせてやるんだ。
 弟じゃなかったらよかったのに……ってさ。

(2003年3月19日) 

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